第47回GIF専門家グループ会合・第53回GIF政策グループ会合の開催


 2022年5月16~20日、対面及びウェブ参加型会議として、第47回GIF専門家グループ(EG)会合、及び第53回GIF政策グループ(PG)会合が開催されました。 GIFで活動を行っているアクティブメンバーである11か国1機関(日、豪、加、中、仏、韓、露、南ア、瑞、英、米及びユーラトム)の EG/PG委員(中露は、ウェブ参加。他のPG委員及び代理者は対面参加)、OECD/NEA事務局、炉型別のシステム運営委員会(SSC)や各種WG/TFの議長及び代理者や、 IAEA(オブザーバー)が参加し、各炉型の開発及び関連R&Dの状況(SSC)や、第4世代炉に係る評価手法の開発状況、及び各第4世代炉への適用状況(評価手法開発WG)、 第4世代炉開発推進に係る機会検討のための各種TFの活動状況が報告/共有され、多国間協力として第4世代炉開発を行う上での理念及び方法論の確認/共有、 その理念及び方法論に基づく協力体制・内容・方向性の具体的協議、成果のまとめ方と公開すべき成果の協議が各活動に対し行われた。 本2022年春のEG/PG会合は、日本議長期間の重要政策を引継ぎ、米国が、1)気候変動対策としての第4世代炉システムの強化(柔軟な運用と非電力利用)、 2)研究開発から実証/実装への移行を支援(技術:Technical Readiness Level、規制:Regulatory Readiness Level、経済性向上)、 3)産業界との連携強化(Industry engagement、上級産業界諮問パネル/SIAPの活用)、4)第4世代炉に関わる人材ネットワーク(Gen IV talent pipeline)の 4政策項目を掲げ、活動をリードする初会合でもあり、米国PG議長Ms. Alice CAPONITI(米、DOE/NE-5:Deputy Assistant Secretary for Reactor Fleet and Advanced Reactor Deployment)の熱意ある司会と進行、各国代表委員からの積極的な意見提示、協議、決議が目立った会合であった。 なお、日本(上出英樹PG副議長)は、ネットワーク・教育担当副議長として、また前議長として米国を支えており、米国より謝意を表明されている。 多国間協力の理念として、各国が等価とみなしうる貢献を持ち寄る、つまり(GIF憲章に基づき)実質上、各国の得意分野の活動を持ち寄る体制をとっており、 かつ、その体制/体系下で第4世代炉の実証に向けての協力を行うことが、産業界との連携を考慮しても、重要であり、有効であることが改めて、 強くメンバー間で認識され、その理念に基づき、開発メンバー間の多国間協力として、実証/実装を推進していく意思が共有された。




GIFの各推進分野の状況を以下に示す。なお、GIFの推進組織体系等は、本ウェブサイトの該当記事を参照のこと。

  • 炉開発分野:GIFでは、6種類の炉型別に、システム運営委員会(SSC)を設置し、開発を推進している。このうち、ナトリウム冷却高速炉(SFR)高温ガス炉(VHTR)といった国際的に設計/建設/運転知見を有する分野では、各炉型別のSSC参加メンバー間で、既存の安全設計知見に基づく、安全設計基準の標準化SDC/SDG)が進み、また標準化された内容の各国プロジェクトへの反映が行われている(EUのESFR-SMART projectへのGIF統合安全評価手法/ISAMの適用など)。SFRでは、SSC参加メンバー間で各設計の工夫、判断根拠の共有が各メンバーの有する試験設備の仕様共有とともに進み、また、燃料ハンドブックの作成、既存運転経験(温度履歴)を用いた安全ベンチマークの実施が進んでいる。VHTRでは、金属燃料、セラミクス/複合材料燃料に関し、先進製造工学(AME)のタスクが新しく立ち上がるとともに、各メンバーが進める水素製造プロジェクトの目標/進捗状況/課題が共有された。溶融塩炉のように、まだ炉型が確定しておらず様々な設計例が提案されている分野、及び単一国の開発のみが進んでいる鉛冷却高速炉分野では、簡易的な合意(MoU)の元、暫定システム運営委員会(pSSC)を形成し、各国のプロジェクト進捗状況の共有を実施している。一方で、このような緩やかな協力体制下でも、協力の実効性をあげるべく、pSSCにおいても、(SSCでの活動と同様の)協力分野の特定/合意、実施(分担)計画の策定が進められている。

  • 第4世代炉の共通評価法を開発するWG:リスク・安全性WG(RSWG)は、第4世代炉の安全基準類の整備を進めており、ナトリウム炉が主導してきた安全設計クライテリア、ガイドライン(SDC/SDG)の策定の外部機関によるレビューが最終段階に達しているほか、他炉型においても、安全設計クライテリアの検討が進んでいる。また、リスクインフォームドアプローチの分野においても、これまでの具体的な設計知見を評価の中に反映させるべく、SFRを先行事例として、事例の評価法の中への取り込み/標準化活動が開始された。このような設計事例の評価法への反映は、核拡散抵抗性・核物質防護(PRPP)の分野でも、取り組まれており、PRPPWGは、各第4世代炉型のPRPP特性を評価し、PRPP白書として公開した。経済性モデルWG(EMWG)は、歴史的には、経済性評価法/コードG4ECONS)の開発、検証を実施してきたが、2019年に、第4世代炉の柔軟性(フレキシビリティ)に関するレポートを発行するなど、電力市場からのニーズを考慮した活動を実施している。このうち、経済性評価法に関しては、評価コードの中に、モジュール炉独自の観点/評価項目の導入、非電力利用に関する評価法の確立、感度解析機能の追加を行うべく、2025年までの長期開発計画を立案した。また、コスト削減方策に関するレポート(次世代原子力テクノロジーのコスト削減方策とそのレビュー)は、今後、参加メンバーからのさらなる事例追加を行い、2021年9月発行の第1版の改定を行う予定である。

  • 機会の促進に関するWG/TF:教育・訓練WG(ETWG)は、従来より、月例GIFウェビナー及び各種教育イニシアティブを推進している。第4世代炉の技術を中心的テーマとして紹介しながらも、他機関との合同で連携活動を行う際には、脱炭素社会における原子力エネルギーの役割のような原子力全般にわたる共通課題も取り扱っている。特に、今期(2022-2024)より、あらたにGIF副議長ミッションとして、従来の安全・規制、市場、R&D協力に加え、設定されたネットワーク・教育関連ミッション(ミッション担当:上出PG副議長/JAEA)に関しては、第4世代炉の技術に関するアウトリーチ(教育・ネットワーク)を行う上での推進力(炉システム実証/実装への流れ、脱炭素化などを通した社会への貢献、持続可能性/サステイナビリティ/ゼロエミッション、原子力技術の発展とそのためのR&D施設/研究能力)、活用可能な機会(GIFのウェビナーや各種イニシアティブを通じ蓄積された知見・経験、GIFの各種ワークショップを通じ蓄積された知見・経験)、注意を払うべき要因(知的財産権、活動や方向性、意図の不整合)を紹介するとともに、今後も戦略的に、ウェビナー及び各種イニシアテイブを企画、推進していくことの重要性を、GIF参加メンバーへ説明した。また、AMMETF(先進製造・材料工学TF)は、ニーズ把握アンケート、GIF内外関係者によるワークショップ(第1、2回)を通じ、革新的な材料や機器に関する開発状況・課題の共有(第1回)、先進製造技術の認定を加速する機会/方法/課題(特にモデリング/シミュレーション技術の導入)(第2回)の協議を実施してきた。第4世代炉は、認定規格のもとで設計・製造される高技術プラント(High Technological Reactor)であるという共通認知が深まりつつあり、本認識のもと、第3回のワークショップとして、認定/規格に関するワークショップを近日中に実施予定である。原子力エネルギーの非電力利用TF(NEaNHTF)は、1)NEaNHに関する知見の共有と蓄積(ワークショップ開催、データベース構築)、2)6炉型を横断する課題に対する解(6x3x6マトリックス)の提示、3)熱利用に向けて原子力分野を超えたネットワークの構築、4)NEaNHシステムの分析を活動目標としてあげており、近日中に活動のポジションペーパーをまとめる予定である。

  • 産業界との連携:GIFは、従来より、上級産業界諮問パネル(SIAP)というGIF参加メンバーが、産業界を代表する有識者を推薦し、GIFの活動をレビューする組織を有している。SIAPは、本会合の中で、GIFのリーダシップを好意的に受け止めるとともに、産業界との連携強化に対し、戦略的なアドバイスを実施することを約束した。特に、社会実装における初号機(FOAK)ユニットの建設において、プロジェクトの進展が必要であるが、知的財産権(IP)を含む現行のGIFの枠組み下でも、産業界とGIFは協力を実施することができるとの見解を示した。GIFは、産業界との連携強化に関連し、SIAPの助言/提言を今後も活用していくとともに、既にGIF内各所で規定されているが、実効性が十分高まっていない各種規定を一つの政策文書としてまとめ、産業界との連携方法を明確にすることとした。さらに、SIAPと連携し、GIF フォーラムインダストリー(GIFシンポジウムを継承し、産業界や外部機関との連携に着目したイニシアテイブ)を、10/3-7の期間で、G4SR-4(第4世代炉とSMRをテーマにした国際会議)と合同で開催するため、本イニシアテイブの詳細(各種プレナリーやパネルセッションの構成等)を協議した。

  • 2022年1月からの3カ年は、Ms. Alice CAPONITI(米、DOE)がGIF議長を務める。米国は、日本リード期間の活動を肯定的に活用し、前述の4重点政策項目に基づき、GIFの活動をリードしていく。今期の政策グループ体制は、PG議長(米/DOE)、副議長(日/JAEA:Network and Education)、(韓/KAERI:R&D Collaboration)、(仏/CEA:Market issues and Industry Engagement)、(加/NRCan:Regulatory Issues)であり、政策部長(PD:英/NNL)と技術部長(TD:米/ANL)の補佐のもと、NEAが事務局を務める。なお、本会合冒頭、ロシアのウクライナへの侵攻と非人道的行為(invasion/humanitarian atrocities)に触れ、強い非難の意思を表明するとともに、このような行為は、多国間協力の趣旨と相いれないことが議長により、明確に表明された。また、GIF加盟国の独自の姿勢、政策、対応を尊重しつつ、GIFの集合体としての相互理解と中立性、冷静さを各参加メンバーに求めている。このように、日本は、多国間協力の趣旨と理念を尊重し、また、日本の第4世代炉開発の姿勢、政策を推進するために、GIFに参加、協力し、第4世代炉の開発を今後も進めていきます。