第4世代原子力システム国際フォーラムについて



1. 第4世代原子力システム国際フォーラムとは

  • 第4世代原子力システムの研究開発を開発国間で協力/推進することを目的に2001年7月に発足した国際協力の枠組み。2030年代の商業導入を目指している。
  • 2020年3月現在、13ヶ国1機関(アルゼンチン、豪州、ブラジル、カナダ、フランス、日本、中国、韓国、南アフリカ、ロシア、スイス、英国及び米国及びユーラトム)が参加

2. 第4世代原子力システムとは

  • 「第1世代」(初期の原型炉的な炉)、「第2世代」(現行の軽水炉等)、「第3世代」(改良型軽水炉、東電柏崎刈羽のABWR等)に続く、次世代の原子炉概念(図1)
  • 下記開発目標を満たす革新的原子炉システム。図2に示す6システムを2002年に選定。
  • 持続可能性
    • 燃料の効率的利用
    • 廃棄物の最小化と管理
  • 安全性・信頼性
    • 安全で信頼できる運転
    • 炉心損傷の発生頻度が極めて低く炉心損傷程度も小さい
    • 敷地外の緊急時対応不要
  • 経済性
    • 他のエネルギー源を凌駕するライフサイクル・コスト
    • 他のエネルギープロジェクトと比肩する金融リスク
  • 核拡散抵抗性・核物質防護
    • 軍事転用の魅力度が低く盗取困難
    • 耐テロ性

  • 第4世代原子力システムに関し、よく聞かれる質問
    第4世代原子力システムの利点

図1:原子力システムの世代




図2:GIFにおいて選定された第4世代原子炉システム



3. 研究開発段階の区分と開発見通し

  • GIF技術ロードマップ(2014年1月改正)による各システムの研究開発の進捗度と開発見通し(図3)

    • (1) 成立性確認段階(Viability phase)
        基本概念の試験/解析研究及び基本原理に係る技術課題の解決
    • (2) 性能確認段階(Performance phase)
        工学規模での発生現象の明確化及び対応システムの機能確認
    • (3) 実証段階(Demonstration phase)
        実用化につながるシステムの詳細設計・許認可・建設・運転
    • ※GIFでは実証段階前までの研究開発協力を実施

    • 開発見通しに関し、よく聞かれる質問

図3:各炉型の開発見通し



4. GIF発足からこれまでの経緯

1999年米国が第4世代原子力システム概念とその研究開発のための枠組みとしてGIFの構築を提唱(表1)
2000年1月「GIF設置に関する共同声明」発出
2001年7月GIF憲章署名(開発理念を定める)(表1)
2002年7月100を超える炉概念からGIFの研究開発対象として6システムを選定
2002年12月技術ロードマップを策定
2005年2月枠組協定(FA)署名(研究開発協力の枠組みを規定する国際約束)(表1)
2006年4システムについてシステム取決め(SA)署名(その後、適宜、参加希望国が追加署名)、その後、研究開発計画を定めたプロジェクト取決め(PA)に順次署名
2010年2システムについて覚書(MOU)署名
2011年7月GIF憲章の延長署名(以後、自動延長)
2014年1月研究開発の進捗から技術ロードマップを改定
2015年2月枠組協定の延長(2025年2月28日まで)

表1:GIF枠組協定締約国(2020年1月現在)

参加国・機関
(憲章署名国)
実施機関枠組
協定※
システム取決め覚書
GFRSCWRSFRVHTRLFRMSR
アルゼンチン未署名
豪州豪州核科学技術機構(ANSTO)Sep. 2017xx
ブラジル未署名
カナダカナダ天然資源省(NRCan)Feb.2005xxx
ユーラトム共同研究センター(JRC)Feb. 2006xxxxxx
フランス原子力・代替エネルギー庁(CEA)Feb. 2005xxxx
日本資源エネルギー庁(ANRE/SA)
原子力機構(JAEA/SA)
〔東京工業大学(TiT/MoU)〕
Feb. 2005J/KUANRE/WUJAEAJAEATiT
韓国科学技術情報通信部(MSIT)
韓国原子力国際協力財団(KONICOF)
Aug. 2005xxx
中国中国国家原子能機構(CAEA)
中国科学技術部(MOST)
Dec. 2007xxxx
南アフリカエネルギー省(DoE)Apr. 2008
ロシアロスアトム(ROSATOM)Dec. 2009xxxx
スイスポール・シェラー研究所(PSI)May 2005xx
英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)Oct. 2018xx
米国エネルギー省(DOE)Feb. 2005xxxx
  • ※日本の参加状況の補足:
     GFR-SSC:JAEA、GFR FC PMB:京都大学(KU)。SCWR-SSC:資源エネルギー庁(ANRE)/早稲田大学(WU)。
     SFR-SSC/PMB:JAEA。VHTR-SSC/PMB:JAEA。
     LFR 暫定SSC:東工大(TiT)。MSR 暫定SSC:オブザーバ参加(溶融塩炉国際フォーラム)。

  • ※枠組協定の補足:
     2005年4月に枠組協定に署名。2015年2月に枠組延長協定に署名(外務省)。



5. 運営体制(表2及び図4)

  • 政策グループ(PG)がGIF全体の枠組み、財政を含むGIF政策(運営)にかかる決定責任を負う。米仏日韓加の5ヶ国が議長・副議長国となり、主導的役割を果たしている。
  • 専門家グループ(EG)は、政策グループへの技術的助言・諮問機関として提案を行う。
  • システム毎に置かれるシステム運営委員会(SSC)が、研究開発計画の立案・進捗管理を行う。
  • プロジェクト毎に置かれるプロジェクト管理委員会(PMB)が、各プロジェクトの研究開発計画の立案等を行う。
  • リスク・安全性、経済性モデル、核拡散抵抗性・核物質防護についての評価手法検討ワーキンググループ(MWG)が、横断的な評価手法の整備を進める。教育・訓練ワーキンググループ(ETWG)が横断的な教育情報発信・ネットワーク活動を実施中。他に先進製造・材料工学ワーキンググループ(AMMEWG)が活動中。
  • 政策事務局(PS)が政策グループ及び専門家グループの事務局を、技術事務局(TS)が各委員会の事務を務める。
  • 上級産業界諮問パネル(SIAP)は産業界の視点から各炉システムの開発をレビューしたり、開発の方向性をアドバイスする。
  • その他、期限付きで設置されるタスクフォース(TF)がPGでの議論に基づく個別の課題を検討している。原子力エネルギーの非電力利用(NEaNHTF)が活動中。


※図をクリックするとpptxファイルが開きます。

図4:各GIF組織



表2:各GIF組織の機能等

組織名称機能日本の貢献・その他備考
政策グループ
(PG:Policy Group)
全体的な枠組み・財政を含む政策(運営)に関する決定・他機関との交流に責任を有する。 日本が副議長を務める。期間は3年間。
2019-2021は議長、2022-2024は副議長)
専門家グループ
(EG:Expert Group)
炉システム/評価法開発等の進捗をレビューし、PGに報告する。 JAEAより委員として参加。
上級産業界諮問パネル
(SIAP:Senior Industry Advisory Panel)
産業界の視点からシステム開発の進捗をレビューするとともに、開発の方向性をアドバイスする。 原電及びMHIより参加。
システム運営委員会
(SSC:System Steering Committee)
各システムの研究開発計画(ロードマップ)の立案、推進。システム毎に設置されている。LFR/MSRはProvisional SSCとして情報交換が行われている。 MSR以外の各システムに委員として参加。MSRはオブザーバー参加。SFRの議長を日本が務める。
(SFRは、米仏日が2年交代で、議長を務める)
プロジェクト管理委員会
(PMB:Project Management Board)
SSCの支援の下、システム研究計画に沿って、各プロジェクトの研究開発の立案・見直し・実施を行う。プロジェクト毎に設置されている。 各プロジェクトにJAEA、大学から委員が参加。
評価手法検討ワーキンググループ
(Methodology Working Group)
①リスク・安全性、②経済性、③核拡散抵抗性・核物質防護、④教育・訓練、⑤先進製造・材料工学の5つのグループがあり、評価手法を検討するとともに、教育・訓練に関する機会を提供する。常設グループ。 各WGにJAEAから委員として参加。
タスクフォース
(TF:Task Force)
個別課題に対する解決策を検討する期間限定グループ。SDC-TFは、日本の提案により設立され、日本のリードにより、各システムに対する安全クライテリア(SDCあるいはSDG)が構築された。 SDC-TFにおいて、設立当初から、JAEAが議長を務めた(米が副議長)。
政策事務局
(PS:Policy Secretariat)
政策グループ議長/副議長を補佐し、PG及びEGをリードする。 政策事務局の技術秘書は、OECD/NEAの技術秘書長が務めている。
技術部長はEG議長を兼任する。
技術事務局
(TS:Technical Secretariat)
各種会合、予算運用等の事務局を務める。 各締約国からのコストフリーエキスパート(日本からも派遣)とNEA職員が共同して実施。


6. 他の国際機関との協力関係など

  •  GIFはIAEA、OECD/NEAやCEM NICE Futureと近接な協力関係にあります(表3及び図5)。また、次世代炉を発展させていく新たな機会を共有していくために、公開イベントやウェビナー、レポートの情報をGIFのパートナーと共有しています。 さらに、GIF公開シンポジウムやワークショップを継続的に開催し、ステークホルダーとのコミュニケーションを図っています。 なお、技術文書を公開するだけでなく、次世代炉を開発していくためのスタンスを提示し、ステークホルダーとのコミュニケーション促進を図っています。

表3:他の国際機関・枠組みとの協力

組織名称期待されている協力分野・協力内容
IAEA
  • 年1回、GIF-IAEAインターフェース会合を開催し、GIF-IAEA間の協力方針・協力項目を協議している。第15回GIF-IAEAインターフェース会合(2021年6月29~30日)では、革新的な原子力システムの技術開発、安全性、経済性、非電力利用を含む様々なアプリケーション、PRPP、モデリングとシミュレーション、教育・訓練分野にについて意見交換を実施した。
  • また、個別の重点協力会議として、液体金属冷却炉やガス炉の安全性に関するワークショップを定期的に開催し、安全基準の国際化に向けた協議を実施している。
OECD/NEA
  • 開発・設計側としてのGIFと、規制側としてのOECD/NEA/CNRA(原子力規制活動委員会)及びCSNI(原子力設備安全委員会)との意見交換及び安全設計クライテリアへのレビューの場としてWGSAR(先進炉安全常設ワーキンググループ)を活用。GIF代表(主に安全関係者)がWGSARに参加している。
  • 市場ニーズやSMR分野などNEAの技術委員会が実施している活動との協力/協調も実施している。
CEM NICE Future


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図5:GIFとの連携パートナーの関係(見込み含む)


7. ナトリウム冷却高速炉(SFR)及び超高温ガス炉(VHTR)に関するトピックス


SFR
  • 先進燃料:酸化物燃料、金属燃料、窒化物燃料の性能評価・実証試験に関し、参加国で情報共有を実施中。また、マイナーアクチニドや高燃焼時の影響に関しても、情報共有を実施中。燃料ハンドブック(全3部)の第1部が完成。
  • 安全・運転:安全技術及び安全評価のための手法、モデル及びコード、試験・運転経験、安全技術に関連する革新的設計及び安全システム(固有の安全性や受動安全システムなど)の情報共有/活動分担を実施中。各国の協力課題として安全解析ベンチマークを実施中。
  • 機器・BOP:先進的な供用期間中点検・補修技術(ISI&R)の開発、破断前漏えい(LBB)の評価手順、エネルギー変換のためのブレイトンサイクルなど、SFRの経済競争力を高めるためのいくつかの研究開発要素やデコミッショニングに関し、情報共有/活動分担を実施中。
  • システム統合・評価:ナトリウム冷却高速炉(SFR)システムの統合及び評価を実施するために、主要なSFRシステムオプションと設計トラックのリストを維持するとともに、SFR技術の研究開発ニーズの包括的なリストを作成し、技術研究開発年間作業計画とニーズの対応を確認している。
  • SFR安全クライテリア(SDC)国際標準化に向けた活動:IAEA等との関係国際機関のレビューを受け「安全設計基準」及び「安全設計ガイドライン」を改訂した。SDC-TFは必要なミッションが終了し、リスク・安全作業部会(RSWG)に統合され、IAEA等との協力を継続している。超高温炉や鉛冷却高速炉を含む他のGIFシステムだけでなく、IAEAで議論されている非軽水炉用のSDC/SDGの原案作成にも貢献し、開発されたSDCとSDGが、すべての先進的な原子力システムの安全性向上に貢献することを期待している。

VHTR[1]
  • 水素製造:VHTRから取り出す高温熱を利用した水素製造技術に関する研究開発の国際協力による効率的な推進を目的として、日本、仏国、米国、韓国、カナダ、EUの参加により熱化学法ISプロセス、高温水蒸気電解法、その他の熱化学法(Cu-Clプロセス)及び原子炉接続技術の各分野において共同研究を実施中。
  • 燃料・燃料サイクル: VHTR用燃料の重要研究課題である照射試験・照射後試験、燃料物性試験、安全性試験、新型燃料、廃棄物処理、その他の核燃料サイクルに関する研究開発の国際協力による効率的な推進を目的として、日本、米国、韓国、EU、中国の参加により、EUと米国の照射試験炉を利用した共同照射・照射後試験、燃料挙動モデルのベンチマーク、被覆層特性評価のためのラウンドロビン試験、安全性試験、事故時放出FP挙動に関する燃料挙動モデルのベンチマークを実施中。
  • 材料:VHTR設計に必要な材料特性の評価を国際協力によって効率的に推進することを目的として、日本、仏国、米国、韓国、スイス、EU、中国、豪州の参加により、黒鉛、金属、セラミックスについて特性評価を実施中。各国が作成した技術報告書をもとに、第4世代原子力システム材料ハンドブックを作成中。
  • 計算手法検証・ベンチマーク:VHTR設計や安全評価に用いる計算手法に関する研究開発を国際協力によって効率的に推進することを目的として、日本、米国、韓国、EU、中国の参加により、重要度ランクテーブル (PIRT)評価、数値流体解析、炉物理及び核データ、化学不純物の移行評価及びプラント動特性解析の各分野において共同研究を実施予定。
  • [1] M. Fütterer, et al., Recent Advances in the GIF Very High Temperature Reactor System, Proceedings of HTR 2018, Warsaw, Poland, October 8-10, 2018, Paper HTR 2018-187.