UNECE報告の「持続可能な開発に向けた原子燃料資源の活用」レポート


 国連欧州経済委員会(UNECE)は2021年3月11日、「持続可能な開発に向けた原子燃料資源の活用―原子力の導入に向けた経路(Application of the United Nations Framework Classification for Resources and the United Nations Resource Management System: Use of Nuclear Fuel Resources for Sustainable Development – Entry Pathways)」というタイトルの報告書を公表した。
 本報告書は、エネルギー転換において原子力が果たしうる役割を適切に理解したいという意思決定者のニーズに応えるものであり、また、新規原子力参入者が利用できる主要な選択肢と課題を明らかにしています。報告書の主な見解は以下の通りです。

  • 原子力エネルギーは、持続可能な開発という世界的な課題を達成するために不可欠なツールです。エネルギー分野の脱炭素化はもちろん、貧困の解消、飢餓の撲滅、清潔な水の確保、価格の手頃なエネルギーの確保、経済成長、産業界の技術革新などにおいて、極めて重要な役割を担っています。適切な政策の選択と社会的認知度の向上、そして現在進行中の技術革新により、原子力エネルギーはこれまで存在していた導入障壁を克服し、新たな市場で事業展開を行うことができます。

  • 原子力新規導入国の導入経路は、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」とも一致しており、国際原子力機関(IAEA)の「マイルストーンアプローチ」に基づく原子力発電開発プログラムは、国のエネルギー需要、社会経済的、環境的な目標を達成し、各国が地球温暖化の防止に関する国際的な誓約を順守するために役立ちます。

  • 核燃料サイクルおよび放射性廃棄物管理戦略を実行するための持続可能なオプションは数多くある。各国は、自国のニーズ(経済発展の促進、供給の安全性/安定性など)に加え、国内の鉱物資源の存在、技術的能力、異なる燃料サイクルオプションを選択したときの経済性に基づいて、自国の戦略を採用すべきである。

  • 現在利用可能な原子炉設計のレベルは、実証済みの成熟した技術に基づいており、80年間の運転認可を受けているものもあります。様々な設計タイプがありますが、いずれも高水準の安全性と優れた運転性能を持ち合わせています。これらの原子炉は、信頼性が高く、手頃な価格の低炭素電力を供給し、各国が持続可能な開発目標を達成することを支援できます。

  • 現在、さまざまな形式の小型モジュール炉(SMR)や先進的な原子炉が開発されており、この中には近い将来に建設可能なものもあります。これらの炉は高い柔軟性をもち、電力だけでなく、熱エネルギーの供給や輸送分野の脱炭素化にも適適用可能で、持続可能な開発を加速することができます。

  • 原子力イノベーションと、ハイブリッドエネルギーシステムの追求は、原子力部門と他のクリーンエネルギー技術や非エネルギー部門との連携を強化し、統合的な開発を行うためのキー(触媒)となりえる。現在の原子力技術においても、今後の新型設計の原子炉においても、電力だけでなく、熱エネルギーの供給や輸送分野の脱炭素化を実施することができ、化石燃料の代替として、コスト競争力を持って貢献することができる。

  • 原子力と再生可能エネルギーの技術は、クリーンで手ごろな価格、かつ信頼性の高いエネルギーを提供するという共通の目的のために、お互いに補完し合う方法が数多くある。

  • 原子力開発プログラムの成果を得るために、政策立案者は、原子力エネルギー政策、電力市場の設計、国際協力、規制の調和、原子力技術とサプライチェーンの開発、プロジェクトの構造化と管理、国民の参加、多様性と包括性の構築を優先させる必要があります。
(参照資料:UNECEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)