Generation IV 国際フォーラム: 20周年記念ウェビナー


本年、GIFは設立から20年を迎えました。
これを記念して、2021年4月28日に、歴代及び現GIF議長のリードにより「20周年記念ウェビナー:第4世代原子力システムの実用化にむけたこれまでの取組みと今後の展望」を開催いたしました。国内外の政府関係者、国立研究所、大学、電力、メーカー等から約200名(日本からは約60名)の参加の下、気候変動対策をはじめ持続可能な社会の発展のために、第4世代原子力技術が果たすべき役割を紹介し、共有いたしました。

ウェビナー概要
歓迎の挨拶として、気候変動対策としての原子力の果たす役割、国際協力推進に対する期待、先進技術を取り込んだ今後の技術開発への期待等が述べられた後、Paviet GIF教育・訓練ワーキンググループ議長(米、PNNL)の進行の下、GIFの進捗状況、将来の展望という2つのパネルディスカッションが行われました。



パネルディスカッション1 ― GIFの進捗状況(これまでの成果と現在)
本パネルは、歴代GIF議長を務めたパネリストが自身の経験に基づき、GIF活動状況や成果を紹介するために、開催されました。各パネリストの発言/見解の概要は以下の通りです。

Magwood OECD/NEA事務局長(GIF初代議長:2003年~2005年):(GIF立ち上げに係る経緯を交え原子力の研究開発が、政府主導から産業界主導へと移行したことに触れ)GIFには、各国政府が保有する施設や科学の専門知識などの研究開発資産という強力な基盤があり、新技術の展開を成功させるために必要なものが揃っていることから、過去・現在・未来のGIFの成功は確実であると信じている。

原子力機構高速炉・新型炉研究開発部門 佐賀山高速炉開発タスクフォースリーダー(GIF議長:2010年~2012年):GIFの開発目標達成には「持続可能性」と「安全性」が重要であり、特に「安全性」に関しては自身が議長であった2010年秋に安全設計要件(SDC)の策定を始めた。SDC策定のために多くの協力を得たことについて感謝する。

Kelly前・米国原子力学会長(GIF議長:2013年~2015年):(GIFのこれまでの支援に対して謝意を述べると共に)新たなコンセプトに多国間で取り組むことの困難さがあったものの、自身の在任時には多くの加盟国の協力を仰ぎ、安全性に関する議論を活発化させ、安全設計要件・安全設計ガイドライン(SDC/SDG)の開発を進めた。第4世代原子力システムの実証・展開段階に向けては、IAEAやOECD/NEAを通じた原子力規制当局のコミュニティと関わりを深める事が非常に重要である。

Behar Fayatグループ・エネルギー局長(GIF副議長:2010年~2015年):経済性等の課題を理由に第4世代原子炉は第3世代原子炉との競争に直面する可能性があるとも言われるが、高速炉が既存の軽水炉技術よりも優先的に導入される可能性がある理由はいくつもある。特に核燃料資源の最大化と高レベル廃棄物の最小化が可能であるといった特性は市場や社会にとっての第4世代炉の魅力となり得る。

Gauche Framatome社CERCA・燃料サプライチェーン事業副社長(GIF議長:2016年~2018年):気候変動対策と安定供給の両面から、安全で、革新的で、持続可能で、競争力のある原子力発電が必要であると共にGIFがその分野での国際協力の唯一の場所である。議長就任時には、原子力開発に乗り出す企業や起業家とのつながりを重視し、議論を重ね、政策決定者と小型モジュール炉の開発者とディスカッションの場を設けると共に、2020年初頭には、SMRベンダーやサプライチェーンの中小企業を含む原子力産業との対話(Round Table)も開始した。

原子力機構高速炉・新型炉研究開発部門 上出副部門長(GIF議長:2019年~現在):持続可能性が第4世代原子炉を議論する上で鍵である。昨年のIAEA総会Scientific Forumでは、第4世代原子炉がカーボンフリーの発電に貢献できるだけでなく、高速中性子を使ったマイナーアクチニド核種の燃焼のような高レベル廃棄物の削減に貢献できることを示した。GIF議長としてこの2年間にIAEAやClean Energy Ministerialなど様々なチャンネルを介して、世界中の人々や政策立案者に向けて第4世代原子炉が果たす役割について示してきた。また、研究開発タスクフォース(RDTF)及び先進材料・製造技術タスクフォース(AMMETF)を立上げ、電力会社、原子炉ベンダー、規制当局からの参加も得てワークショップを開催した。その場では安全や設計など評価手法の検証や妥当性確認(V&V)、開発段階からの規制当局とのコミュニケーション等が重要な課題として取り上げられた。GIFでは、今後も様々なステークホルダーと課題を共有し、課題を解決するための活動を強化したい。


パネルディスカッション2 ― 将来の展望
本パネルは、各パネリストが聴講参加者からの質問に答え、第4世代原子力システム技術の将来展望について、各位の見解を述べる形で進められました。

Q: 低炭素エネルギーミックス内での第4世代原子炉の役割や魅力をどのように考えるか?
Magwood氏:原子力技術の大量展開/利用といったエネルギー供給に関するニーズが明確に存在する。問題は、それを実現できるかどうかであり、世界のニーズに合ったタイムスケールで、第4世代原子炉を完成させ、建設/運転し、規制することができれば、第4世代原子炉の見通しは非常に良い。私たちはその実現を証明しなければならない。

Q: 第4世代原子炉導入を促進するために必要な研究開発のブレークスルーと、今後10年から20年のニーズは何か?
佐賀山氏:安全性と経済性に関する開発目標を同時に達成するためには、技術的には革新性が重要なポイントとなる。ナトリウム冷却高速炉(SFR)は近未来の最も有望なコンセプトであり、日本を始めとする開発国は2030年代の商業化を目指している。今から10~20年後にSFRの商業化を進める際には、従来のGIF研究開発の枠組みを超えた協力体制が必要となる。この観点からは、運転・保守・保全に関する世界標準レベルの規格基準を策定することは開発国にとって非常に有益で、GIFは今後この役割を担っていくべきである。

Q: 小型モジュール炉市場における第4世代原子炉の非発電用途への応用の可能性について
Gauche氏:小型モジュール炉市場における第4世代原子炉としては、非発電用途の観点から付加機能を所持し、新たなプロダクトを提供できるようにシステム変更していく必要性と余地があると確信している。次世代の技術やニーズに目を向け、それに具体化していくことは、可能性だけではなく、次世代の人々に対する義務でもある。

Q: ポスト福島の時代に、第4世代原子炉システムについて、どのように積極的に伝えることができるか?一般市民からの信頼と受容、若い世代との関係性は。
Kelly氏:原子力は単なる発電だけでなく、他の非発電用途への応用も視野に入れて進化している。脱炭素化のための商業的なニーズに目を向け、そのニーズに原子力技術を提供することが必要と考えられる。第4世代原子炉の導入実証を成功させるためには、気候変動に対し原子力が果たすことのできる役割について明確にし、一般の人々とコミュニケーションをとることが重要であると考えられる。一般の人々に向けて、GIF自体がもっと公共の場に出て行き、第4世代の原子力について、なぜそれが世界の未来にとって重要なのか積極的に話す必要がある。

Q: 燃料サイクルと廃棄物管理に関し、何が重要であると考えているのか?
Behar氏:取り組むべき課題は第一にコスト、第二に安全性であり、今後、安全性について重点的に取り組む必要がある。また、第4世代原子炉を用いた概念がより安全であることを立証していく必要がある。

Q: 市場で競争力を得、また民間企業とより良い、よりスマートな関係を築くために何ができるのか?
上出議長:原子力は、長期間にわたり安定なエネルギー供給を行い、また出力が変動する再生可能エネルギーを支え、ともに脱炭素エネルギーとして利用可能なエネルギー源である。第4世代炉は既存の軽水炉より高温で運転を行うことが可能で、高効率な熱利用、水素製造に有利である。このような非電力利用による柔軟性は、変動再生可能エネルギーを補完し、電力供給に安定性をもたらし、このような市場のニーズに適合することで経済性向上と競争力に貢献できる。GIFは今後、SMRを含むGIFが推進する6つの炉システムを対象に原子力の非電力利用を推進するタスクフォースを設置する予定である。さらにはGIF Forum Industry 2022といった民間企業も参加可能なイベントを開催し、企業のニーズとGIFの国際協力との連携など、第4世代炉の社会実装にむけて活動の幅を広げたいと考えている。

この他、パネリストからは、研究開発における今後のチャレンジとして、戦略的な材料開発の重要性、原子力プロジェクトにおける資本コストの削減、実証プロジェクトの推進が強調されました。また、第4世代原子炉の開発を強化/推進するためにGIFの活動活性化の重要性、規制当局との良好な対話関係の構築、第4世代原子炉概念の安全性に関する共通理解の醸成、放射性廃棄物の減容やウラン資源の有効利用など燃料サイクルを念頭においた技術追求を継続する意義が強調されました。上出議長は、GIFの現議長として、このような特徴を踏まえ、GIFの活動を今後も強化推進していきたいとの決意を明らかにしました。


ウェビナーを振り返って
GIFは、13の加盟国と1つの国際機関(EU)から構成されています。2018年にオーストラリアが新規に加盟し、2019年には英国が単独の加盟国として活動を本格化させました。1F事故後にはSFRの安全設計基準を国際標準として共通化する活動を行い、さらにSFR以外のLFRやVHTRなど他の炉システムにも展開するなど、この20年の間に活動の幅を広げ、成長を遂げてきました。近年では、IAEAやOECD/NEAなど規制側との連携だけでなく、実用化に向けて技術実証を含む民間のニーズをGIFの協力に生かすこと、資本の課題を含め、政策立案者にむけて、安全性など第4世代炉の優れた特徴と持続可能なエネルギー安定供給に果たし得る役割をアピールすることがますます重要となってきています。このような課題と方向性が20周年記念ウェビナーの講演によって浮き彫りになったものと考えています。(上出)


パネリストの略歴はこちら
当日のウェビナーの録画はこちらから見ることができます。
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ウェビナーのテキストデータはこちら
World nuclear newsに本20周年記念ウェビナーが記事として、取り上げられました。